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「世相 2015-2016」 とりあえず

「とりあえず」

木でできたその小屋は
6畳位の広さがある
窓際に置いたベッドに横たわり
私は天井を見上げなにかを待っている

小屋は自分たちで建てたものだ
素材の丸太はフィンランドから来た
友人と義理の息子が小屋作りを手伝ってくれた
彼は結納代わりに長崎の島から月を持参した
彼のプレゼントにより
私は月に地所をもつことになった
小屋の急な傾斜の天井には
彼がくれた3枚の紙が張ってある
月の憲法 土地権利書 所有地を赤ペンで示した月面地図
緯度40゙ー44°N 経度34°ー38°E 
そこが月の私有地の位置である
私が待っていることと
月に土地をもっていることが関係あるのかどうか
それは私にもわからない

私はよく月を見る
とりわけ満月の夜には・・・
私の土地は月の北半分の東端にある
月にはクジラがいるとして
地球の赤道に当たる位置で
頭を西にしてクジラが寝そべっているとしよう
私の地所はクジラが尾びれで海面を叩き
しぶきがかかるくらいのところだ
地球上には所有する土地はないのに
月にだけ領地を持っているという聖書的反語は
私が待っていることと関係があるのかないのか

満月を見上げるときには
自分の土地に自然に目が行く
そこに私は墓地を作っている
阪神大震災で私は13人の友だちを失った
彼らの墓碑が月面に並んでいるのだ
彼ら全員が同じ命日1月17日
その中のひとりを瓦礫から救い出すことができず
思わず私は叫んだ
   なんでこんなときに満月やねん
そこまで考えがおよび
私はなにを待ってるのかが急にわかった

「とりあえず」
私がしばしば使う言葉だ
レストランでとりあえず料理を食べ
とりあえず旅にでて
とりあえず同窓会に出席してみる
とりあえず講演会に出かけ
とりあえず福島の子どもに寄付をし
とりあえず生まれた共感に満足する
「とりあえず」によって置き去りにされ
宙吊りになり 括弧でくくられ 先送りとなり
判断が留保され 最後の一歩をためらう
夢と希望 戦いへの参加 
新しい関係の構築 未来に向けた行動
これら未消化のそれぞれが発酵し
啓示となって私を見舞うことを私は待っているのだ

待っていてもなにもはじまらないとわかり
私はベッドを抜け出すことにした
月の「静かな海」を泳ぐクジラの姿だけは
満月の夜によみがえるのだけれども・・・
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