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「世相 2015-2016」 199501170546-3 火事

「199501170546-3 火事」

火の手が上ると
人は空の一角を見上げ耳をすます
そこから消防車が駆けつけると思っているように
厚い雲に手を突っ込みサイレンの音を
地上に引き下ろそうとでもいうかのように
多くの場合予想通りにことが運ぶ
空を渡ったサイレンは火事場に降臨し
半鐘に導かれ赤い車が集結する

1995年1月17日午前5時46分
地震直後に住宅街の真ん中で火事が起こった
非常を知らせるサイレンは黙したままで 
いつまでたっても消防車の現れる気配もない
震度7の揺れがすべてのものの口をふさいだのか
人も鳥も樹木も自動車もビルも
大地の無骨な一撃に言葉もなくひれ伏する
美しいまでの無音の中
火だけが炎上の宿運を受け入れ
自足して燃えていた
だれも騒がず
だれも叫ばず
喉の奥に潜むのはありきたりの恐れ
家ガ燃エテイル 家ガ燃エテイル

遠い森の大火のように
人を寄せつけず
消火の浅知恵をしりぞけ
延焼に興味を示すこともなく
自らの意思と義務に従い
火は純粋に燃え盛っている
目路はるか陸続と瓦礫に埋まり
倒壊した家屋の中から
心うつろな住民がようやく姿を見せはじめる
されど消火活動に手をつけるでなく
映画の大火災のシーンを見るくらいの驚きで
被災者は燃える1軒の家を取り囲む
火災現場にくるほど余裕がある人の間で
バケツリレーがはじまり
特別な日にも変わることなく
朝の準備をする空があわただしく動きだす

火事場になじまない
軽快で陽気なリズムが突然聞こえてくる
音のほうに注意を向けると
10歳くらいの少女が燃え上がる家の前で
縄跳びをしている
背中でポニーテールが跳ね
黒いまつげの間の瞳に
小さな火の色を宿し
何かをつぶやきながら少女は無心に縄跳びをする
何もかも萎縮した被災地にあって
少女が縄で作り出す円は
太陽をすくい取り
風を呼びよせ
春の予兆を芽吹かせ
そこにだけ息吹あふれ
いのちの水流れ
屈しない若くやわらかい精神が
ジャンプしている

そのときうすい皮膜を破り
新たな太陽が顔を出した
少女は日の出には目もくれず
家から持ち出せた唯一の宝で空に輪を描き
その中を潜り抜けていく

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