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「世相2015-2016」 手風琴=アコーディオン 

「手風琴 アコーデオン」

国家にひとり立ち向かうとき
丸太で建てた家の壁に
私は犬釘を打つ

11月の新月の夜
灯りひとつない森で
伐採された太い木は
星とともに列車の旅をして
私の家にやってきた

北国の冬のように
丸太の壁は笑いと花々を遠ざけ
むき出しの心のまま
忘れがたい一行の詩が
そこに書きなぐられるのを待っている

私は釘を打つ
羽越本線のレールを支えた古い犬釘
広大無辺の宇宙を仰ぎ見る
ちっぽけな人間の姿で
ひとり戦車の前に立ちはだかった
中国の青年のような犬釘を打ち
私はそこに手風琴を吊るす

手風琴はやがて奏でるだろう
戦端は美しい朝に開かれる と
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「世相 2015-2016」 199501170546-5 死を死なせる

「死を死なせる」

あなたがなぜ思いついたのか
私にはわからない
母子で瓦礫に埋もれ
子どもは死に
あなたは生き残った
病院のベッドで
意識を取り戻したあなたは
まだ温かみの残るわが子を受け取り
乳首を含ませ最後の授乳をする

水から生まれ
水に還る生命
落ち葉の匂いがしたかもしれない乳房
閉じたまぶたの裏で
落日に似た母の乳房の影を子は見たか
遠ざかっていく足音
喪われつつある始原に向かって
あなたは乳を与え続ける

死を死なせる
このいのちむせる
激しい母性によって
永遠の子どもは誕生する

「世相 2015-2016」 原点が存在する

「原点が存在する」

原点が存在する
それは空間上の一点なのか
神の指が静止させ
凍りついた瞬間の乱数表か
194508060815ー08091102
原点が存在する

原点が存在する
夢を埋めた空の大地
生あるものずべての悲しみと
静かな覚悟が集まるゼロアワー
思想が形をなす以前に
すでに口ずさんでいた歌
あの歌は何だったのだろう
原点が存在する

知り合ったばかりの恋人が
暖かい陽の注ぐテラス席で
互いの打ち明け話に耳を傾ける
コーヒーから上る湯気の中でチリが舞う
その人をその人ならしめた家庭料理の味
すでにその人の身ごなしでもある金銭感覚
何に涙し 何を笑うか  
ゆずれない思い 共有するかぐわしさ
原点が存在する

「富士には月見草がにあう」
太宰治は凡庸に背を向けた
「警官と民衆が争っているとき
瞬時にどちらの味方なのかを決めるのが階級意識だ」
ジョージオーウエルはスペインの空でその真実を確認した
パブロピカソは自画像を描き続け
ギョロ目の美術史を完成させる
原点が存在する

傍観によって救えなかった子どもたち
成就できなかった夢
おぞましい挫折の記憶
世界をつかまえ損ねた悔しさ
未来を振り返り
前に進もう
原点が存在する

永遠の越冬者が見つめる星
未生以前に知っていた
あの歌を口ずさみながら
心の底の底で光る斧を手に
戦いの列に加わろう
原点が存在する

「世相 2015-2016」 とりあえず

「とりあえず」

木でできたその小屋は
6畳位の広さがある
窓際に置いたベッドに横たわり
私は天井を見上げなにかを待っている

小屋は自分たちで建てたものだ
素材の丸太はフィンランドから来た
友人と義理の息子が小屋作りを手伝ってくれた
彼は結納代わりに長崎の島から月を持参した
彼のプレゼントにより
私は月に地所をもつことになった
小屋の急な傾斜の天井には
彼がくれた3枚の紙が張ってある
月の憲法 土地権利書 所有地を赤ペンで示した月面地図
緯度40゙ー44°N 経度34°ー38°E 
そこが月の私有地の位置である
私が待っていることと
月に土地をもっていることが関係あるのかどうか
それは私にもわからない

私はよく月を見る
とりわけ満月の夜には・・・
私の土地は月の北半分の東端にある
月にはクジラがいるとして
地球の赤道に当たる位置で
頭を西にしてクジラが寝そべっているとしよう
私の地所はクジラが尾びれで海面を叩き
しぶきがかかるくらいのところだ
地球上には所有する土地はないのに
月にだけ領地を持っているという聖書的反語は
私が待っていることと関係があるのかないのか

満月を見上げるときには
自分の土地に自然に目が行く
そこに私は墓地を作っている
阪神大震災で私は13人の友だちを失った
彼らの墓碑が月面に並んでいるのだ
彼ら全員が同じ命日1月17日
その中のひとりを瓦礫から救い出すことができず
思わず私は叫んだ
   なんでこんなときに満月やねん
そこまで考えがおよび
私はなにを待ってるのかが急にわかった

「とりあえず」
私がしばしば使う言葉だ
レストランでとりあえず料理を食べ
とりあえず旅にでて
とりあえず同窓会に出席してみる
とりあえず講演会に出かけ
とりあえず福島の子どもに寄付をし
とりあえず生まれた共感に満足する
「とりあえず」によって置き去りにされ
宙吊りになり 括弧でくくられ 先送りとなり
判断が留保され 最後の一歩をためらう
夢と希望 戦いへの参加 
新しい関係の構築 未来に向けた行動
これら未消化のそれぞれが発酵し
啓示となって私を見舞うことを私は待っているのだ

待っていてもなにもはじまらないとわかり
私はベッドを抜け出すことにした
月の「静かな海」を泳ぐクジラの姿だけは
満月の夜によみがえるのだけれども・・・
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